基地ログ!

旅するカッパのチャノマハウス。時々開店、河童バー。

「死体が好き」な女達

煎じた漢方薬を飲みながら、ひとりお通夜中。

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あるご縁で知り合った女性が亡くなった。

初めて会った時の、その笑顔のキラキラが印象的で、

きっと後で思い出すことがありそうだなと思っていたら、

突然亡くなられたという。

 

今、まだ、病院の霊安室に置かれている彼女。

身寄りもなく、死体はまだ行き先が決まってない。

あのキラキラは留まる母体をなくし、

ただ冷たくなった器が横たわる。

 

「私、死体が好きなんです」

まるで秘密を打ち明けるかのような後ろめたい声で、

私にそれを告げたのは、マリコさんという女性だった。

 

死体好きが高じて、いわゆる送り人のような仕事に就くために、

アメリカでそういう学校に通っていた彼女は、

日系マーケットのイベントの仕事で、スタッフのひとりとして、

時々、遠くからやってきてくれた。

 

「同じクラスの女の子達もね、同じこと言うのよ」

その頃、彼女は、葬儀屋さんのバイトもしていた。

オフィスに死体が運ばれてくる。

その死体の空気感に安心するのだという。

 

生きてる肉体として、モノを言わなくなった物体の沈黙は、

娑婆への未練をきっぱり否定しているのか、

それとも、まだ言い足りないと思っているのか。

 

死体の気配を感じながら、

マリコさんは、死体と会話をするのだという。

 

オフィスのデスクで仕事をしている、そのすぐ側に死体がある。

そこには死が日常として存在する。

 

彼女が、いろんな人種のクラスメート達と、

死体の話をしている様子を描いてみる。

 

なんか魔女みたいだけど、ちょっと違う。

死体好きな女達の共通点は何だろう?

想像できる?

 

死体の横にいることで、

自分の生をもっと生々しく感じられるからだろうか?

 

マリコさんの話を聞いてから、もう20年近く経っている。

ちょっとした時に、彼女の話を思い出す。

不思議なことに、妙な安心感を私も覚える。

 

あぁ。

そういえば、今日、亡くなった彼女と会ったのも、

マリコさんが死体好きを告白をした場所も、

同じマーケットの同じ場所だった。

 

もし、マリコさんが今でもあの葬儀屋にいて、

偶然にも、今日の彼女がそこにたどり着くとしたら、

彼女らは、どんな会話を交わすのだろう。

 

遅かれ早かれ、みんな死体になる。

そう考えると、お疲れさまって、横たわる彼女の肉体に

ねぎらいをかけてあげたくなる。

 

本当に、女性ひとりで、異国の地で、よく頑張りましたね、って。

 

合掌。