基地ログ!

旅するカッパのチャノマハウス。時々開店、河童バー。

書き出しが見つからない時のウォームアップ①

静かな火曜日@カリフォルニアの夏

 

サーフィンの好きな彼と、

サーフィンを始めたばかりの彼女がいて、

旅先のカリフォルニアで知り合って、結婚して、

大好きなサーフポイントのある町に住もう!と

サンクレメンテに住み始めて、

そこで子供が生まれ、一緒にサーフィンをするようになって、

サーフィン仲間と集う日を作ろうと、

イベントを大好きなビーチで始めて、

気がついたら、30年も続けてた。

いつしか、息子達も大きくなり、

サーファーとして世界を転戦したり、

サーフ関係の仕事についたり。

 

本人達にしてみれば、

おそらく、いろいろあったにせよ、

表向きはそういうことだ。

 

でも、ここに、「日本」と「アメリカ」というキーワードと、

このサーフスポットの名前を入れると、

これが、全く違う意味を持つ物語になる。

 

その物語を書くという仕事をしてる今。

 

こんなに、のたうちまわるのは久しぶり@もの書く仕事

 

「死体が好き」な女達

煎じた漢方薬を飲みながら、ひとりお通夜中。

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あるご縁で知り合った女性が亡くなった。

初めて会った時の、その笑顔のキラキラが印象的で、

きっと後で思い出すことがありそうだなと思っていたら、

突然亡くなられたという。

 

今、まだ、病院の霊安室に置かれている彼女。

身寄りもなく、死体はまだ行き先が決まってない。

あのキラキラは留まる母体をなくし、

ただ冷たくなった器が横たわる。

 

「私、死体が好きなんです」

まるで秘密を打ち明けるかのような後ろめたい声で、

私にそれを告げたのは、マリコさんという女性だった。

 

死体好きが高じて、いわゆる送り人のような仕事に就くために、

アメリカでそういう学校に通っていた彼女は、

日系マーケットのイベントの仕事で、スタッフのひとりとして、

時々、遠くからやってきてくれた。

 

「同じクラスの女の子達もね、同じこと言うのよ」

その頃、彼女は、葬儀屋さんのバイトもしていた。

オフィスに死体が運ばれてくる。

その死体の空気感に安心するのだという。

 

生きてる肉体として、モノを言わなくなった物体の沈黙は、

娑婆への未練をきっぱり否定しているのか、

それとも、まだ言い足りないと思っているのか。

 

死体の気配を感じながら、

マリコさんは、死体と会話をするのだという。

 

オフィスのデスクで仕事をしている、そのすぐ側に死体がある。

そこには死が日常として存在する。

 

彼女が、いろんな人種のクラスメート達と、

死体の話をしている様子を描いてみる。

 

なんか魔女みたいだけど、ちょっと違う。

死体好きな女達の共通点は何だろう?

想像できる?

 

死体の横にいることで、

自分の生をもっと生々しく感じられるからだろうか?

 

マリコさんの話を聞いてから、もう20年近く経っている。

ちょっとした時に、彼女の話を思い出す。

不思議なことに、妙な安心感を私も覚える。

 

あぁ。

そういえば、今日、亡くなった彼女と会ったのも、

マリコさんが死体好きを告白をした場所も、

同じマーケットの同じ場所だった。

 

もし、マリコさんが今でもあの葬儀屋にいて、

偶然にも、今日の彼女がそこにたどり着くとしたら、

彼女らは、どんな会話を交わすのだろう。

 

遅かれ早かれ、みんな死体になる。

そう考えると、お疲れさまって、横たわる彼女の肉体に

ねぎらいをかけてあげたくなる。

 

本当に、女性ひとりで、異国の地で、よく頑張りましたね、って。

 

合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町としゃべる

ロサンゼルスでバスに乗るなら、空のきれいな日をオススメする。

なぜなら、バスをたくさん待つことになるから。

この町の空の青さと高さは、

「ま、いいんじゃない?」って気にさせてくれる。

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「え、車ないの?どうやって生活してんの?」

と、バスライダー生活をしていると、よく驚かれる。

最近はUBER(ウーバーです。ユーバーではありません)とかlyft(リフト)を

利用するので、ほとんど家で仕事してる分には、それほど困ることもない。

 

天気のいい日は、空を見る。

バスや電車の窓から街を眺める。

乗ってくる人たちをそっと観察する。

 

同じロサンゼルスでも、車があるのとないのとでは、

生活感が全然違う。

 

昨日は、ある日系の大先輩を訪れた。

珍しく、進路に迷いが生じたので、

その人にいろいろ相談したいことがあって行った。

ちょっと解決した。

 

行きはUBER、帰りはバス。

スマホで調べた路線バスのスケジュールでくるはずのバスが来ない。

待つ。風が強い。

 

以前、時々、電車でダウンタウンに通っていた時、

乗り換え駅のプラットホームで結構待たされた。

フリーウエイの上下車線の間にあるプラットホームは、

遮るものもなく、ノイズと風に晒されて、

それでなくても、低所得者層の多い乗客が、

余計惨めに見えてしまう。あ、アタシか?w

 

さらにひどいのは、トイレがない。

公共交通機関の客は、この町では、人間扱いされてない。

 

昨日のバスの中では、

黒人のおじいさんがスマホをいじってた。

以前には見られなかった光景だ。

 

フードトラックをやってた頃によく通った交差点に

スタバが建設中。

「こんなとこまでスタバができるんだ」

スタバができるのは、いい傾向だ。

数年前には、数ブロック先にマクドナルドができた。

そんな店ができるような場所じゃなかったのになあ。

 

瞬間、時の流れを思考が捉える。

「そりゃ、こんだけ長く住んでりゃ、町も変わるわな」

 

バスでゆっくり眺めながら過ぎていく風景が、

自分のここでの生活と重なる。

 

「アンタ、最初はこの町のこと、好きじゃなかったわよね」

 

町がバスに座ってる東洋人の女に話し始める。

 

「アーティフィシャル(人工的)で嫌だって言ってなかった?」

 

心でうなづく。

 

「なんで、こんなに長くいんのよ?」

 

なんでだろ?と自問する。

 

「結局、居心地良かったんじゃない?」

 

そうかもしれない。

居心地良すぎて、今は気持ち悪いくらいだ。

 

今日は金曜日で、

チャノマハウスには、いつものKOGI BBQのトラックがきてる。

下から聞こえてくる笑い声、お客さんの会話。

 

歩いてきた道、経験したこと。

失敗も、成功も、全部一緒くたに、

受け止めてくれたこの町の懐の広さ。

同じような経験を共有する人たち。

 

昨日のバスの旅のせいで、

町とのおしゃべりが始まって、

キーボードの音が止まる度に、

いろんなメモリーが、キーの間から溢れ出てくる。

 

ロサンゼルスでバスに乗るなら、

空の青さを確かめてから乗るといい。

 

こんな人工的な町だけど、

住んだら、毎日、こんな青い空が見上げられるんだぜって

話しかけられるから、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殻を脱ぐまで

 

カチンだったか、ゴンだったか。

アタシの殻が壊れる音。

 

ガレージの壁をライトブルーに塗った日。

モノが家中の通路にひっくり返ってた明け方のこと。

寝てる間に、魂が肉体から離れて、

ふらふらしてる時に、

寝ぼけた私が起き出して、

慌てて肉体に戻ろうとしたばっかりに、

床に転がしていたスクリーンにつまずいて、

転んでしまったのよ。

 

魂のバカ。

 

おかげで、

アタシという「人間」だと思っていた体が、

ただの殻のような服だってことが

アタシにバレちゃったじゃないの。

 

アタシは戻れなくなった。

アタシという服を着ていた自分に。

 

あれから半年経って、

アタシは、まだアタシという服を着ている。

けれど、それは服。

 

肉体まるごと、服のようなものだってことを

知ってしまった事実を知る前には

もう戻れない。

 

もちろん、まだ命はあるから、

脱ぎ捨てるわけにはいかない。

 

でも、日々、その事実は明白になる。

もうアタシが元のアタシとは違うということ。

 

ほら、ゆで玉子。

殻を剥く時に、コンコンってやるでしょ?

そして、割れたとこから空気が入って、

ツルンって剥けるのよ。

 

剥けちゃうと、どうなるんだろ?

 そのままあの世に行っちゃうのかしら。

 

アタシはまだこの服を脱ぎ捨てる気も、

そんな未知の世界へ旅立つ準備も出来てない。

 

だから、なるべく、そのツルンッが起こらないように

気づいてないフリをしてるの。

 

今は、ね。

 

いつまで自分を騙せるのか。

ツルンって剥けちゃったら、どうなるのか。

 

そんなことを考えてると、

殻が残念そうに、アタシを見るの。

「そうでしたか、気づいてしまいましたか」って。

 

これからどうしたらいい?

 

そう聞いたら、殻が言ったわ。

「どうもこうも、これからは二人三脚です」

 

アタシ、あなたを大切にするわ。

 

だって、

あなたもアタシも、

もう過去に戻れないんだから。

 

いつか、ツルンって、

アタシがあなたを脱いでしまうまで、

アタシはこの殻の服のヒビを愛おしみ、

ツルンってうっかり脱いじゃわないように、

毎日をスリリングに生きながら、

 この魂の殻を、これまで以上に楽しむって約束する。

 

本当よ。

誓いなんて、入籍した時にさえしなかったけど、

アンタには誓うわ。 

 

そう言ったら、

アタシの殻は、スッとテーブルに手を伸ばし、

冷蔵庫から取り出したビールを口に運んだ。

 

殻と私の契約が完全に結ばれた瞬間。

 

 

 

 

旅するピーターパン

4月の終わりの夜、ロサンゼルスは寒かった。

今日、最後のゲストが到着するのは、午前零時過ぎ。

メールの感じからすると、ちょっと面倒くさそうな客のような気がした。

部屋にヒーターを入れて待つ。

 

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午前零時を90度ほど回った頃に、キッチンテーブルにおいた携帯がなる。

「ピーターだ。今、着いたんだけど、どこから入ればいい?」

「二階に。二階に上がってきて」

階段の向こうに、駐車場に無造作に停められた車の後部が見える。

「その車、まっすぐ停めて」

「車は、僕のじゃない。わかった、上に行く」

大きな荷物を持って上がってきたのは、初老の白人の男性だった。

 

寝室とバスルームを案内した後、寒かったので、お茶を勧めた。

「ああ、それは嬉しいな。イングリッシュティーは大好きなんだ」

ポットに水を入れて沸かす間、ピーターと私の会話が始まる。

「今日はどこから?」

「ボストンの近くの港町からさ。

 旅が好きでね、いつも旅をしてるんだ」

「仕事は何してるの?」

「セールスだよ」

自営業っぽい。自由な感じがする。

 

お茶を淹れながら、あぁ、こんなふうに、ゲストと話すのは

久しぶりだなあと気づく。いつもは、真夜中のチェックインは、

ゲストだけでもチェックインできるように案内をテキストで送って、

私は気にかけながらも、寝入ってしまうことが多い。

 

「お砂糖、ミルクは?」

うーんと考えてるんで、きっとミルクだけはいるんだろう。

「ミルクをもらおうかな」

当たり。

 

「ロサンゼルスには、ボイストレーニングにきたんだ」

「役者さん?」

「いや、スピーチをするのでね」

「ああ、もしかして、モチベーショナルスピーカーみたいな?」

「モチベーションっていうより、インスピレーションかな?」

「ふーん?」

「ほら、クレイジーなことを言ってるばかりで、全然行動に移さないやつ、

 多いだろ?そういう奴のためのちょっとした小話さ、僕がするのは」

「うちの旦那は、私がクレイジーだってよく言うわ。

 ここにも、クレイジーな人たちが時々来るけどね」

「そりゃいい。人生がカラフルになる」

 

自分のためにもお茶を淹れて、手を温めるようにカップを抱く。

もしかしたら、この人は、ピーターパンかもしれない。

名前もピーターだし。

影法師を探しに来たピーターパンじゃなくて、

私の影法師を、ちょっと引っ張ってくれるような会話が進む。

 

「この間はマケドニアに行ったんだよ」

ピーターは、家族がいても、よくひとりで旅をするらしい。

旅をした場所には、中東の紛争地帯も含まれる。

「アフガニスタンを旅した時は、うっかり間違ったバスに乗って、

危ない地域に向かって、3時間もバスに乗ってたんだよ」

「バス、目の前にやってきたバスによく飛び乗ったわ、メキシコで」

「そうそう、どうせ最後まで行った後、戻ってくるんだからね」

なんかやってることがよく似てる。

 

ピーターは、タイに家族がいる。

娘が二週間後に高校を卒業すると言う。

 

「その娘がさ、14歳の時かな。夏にボストンに帰ったのさ。

娘がワンディレクションのファンで、コンサートで知り合った子と

友達になって、その子の親が音楽関係の仕事してて、チケットが

安く手に入ったからって、二週間くらいの予定で行ったら、

いろんな偶然が重なって、3年も住んでたんだよ(笑)」

「じゃ、タイにいた奥さんも呼んで?」

「そうそう、家族で3年。そこで借りた家が売りに出すっていうから、

 それでタイに戻ってね」

 

聞いてると、ピーターは世界中に家があるらしい。

それでも、ホテルが嫌いで、もっぱらAirbnbを使ったり、

時には極上のテントを買って、ビーチに泊まったりする。

 

「人生は一回だろ。後悔しないように、やってみることさ」

お茶を淹れたカップを回しながら、思い出したように言う。

「娘がね、勉強しなきゃ!っていうんだけど、僕はね、

 楽しめ、Have fun っていうんだ」

 

なんでもない会話なんだけど、今日は、書き留めたくなった。

 

書きながら、海童(かいどう)をお湯割にして一杯。

 

Airbnbやってると、会う機会がなかった人と、こんなふうに出会う。

そして、一杯、おいしいお酒が飲めるって仕組み。

こんなことして生きてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅の途中

11月の終わりの日、庭のナスを食べた。

 

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ジムのサウナで、二週間前に痛めたムチウチの首を温めたあと、ロッカーを開ける。

 携帯に、「 🍆 」ダーからのメッセージ。

 ナスを料理しろってさ。

 

もう11月だというのに、ロサンゼルスは相変わらず暖かい。

今年は、15ガロンのポットで育てたナスが、

今も花をつけていて、時々、こうして食卓に並ぶ。

 

ナスくん達がキッチンにやってきて、

「ほら、見ろよ!オレ達、ぴかぴかだろ?」って

自慢してるように思えるほど、立派なナスくん達だ。

 

事故で弱ってた私の気持ちを、

濃い紫のぴかぴかは、元気にしてくれる。

 

今度、寝たきりになるなら、

お庭の見えるところにベッドを置こう。

 

そんなことを考えてたら、ある女の子に出会った。

 その子は、もう人間としては、この世にいないけど、

彼女が病に倒れてから、ずっと書いていたブログを、

読ませていただいた。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 

 残りの人生がちょっと短くなるかもしれないってわかったからって、

何かを急に変えなきゃいけないとか、

特別なことをし始めるとか、

多分、自分は、そういう死ぬまでの生き方はしないんじゃないかと思う。

 

このデザイナーの女の子は、

癌だとわかった後に、毎日をそのまんま続けていくことを選んだ。

その日常がブログに綴られる。

29歳で亡くなった彼女、私の上の娘と同じ歳だ。

 

この子は、最後もギリギリまで一人暮らしをすることを選んでる。

お母さんと同居するようになったのは、

本当に最後の最後、自分で自分のことができなくなってから。 

 

私の娘でもないのに、

なぜか、その彼女の選択や生き方が、

とっても誇らしくて、

私は、いつも書きかけてやめてしまうブログを

今日は書き切ってみようと、

ちょっと頑張ってる。

 

もっとたくさんの人に、

彼女に出会ってほしくって。

 

私たちは、死を忘れているけれど、

死は決して、私たちを忘れていない。

 

それ、どこで読んだ言葉だったかは忘れたんだけど、

時々、心の底から取り出してみる言葉だ。

 

だから、毎日が大事。

だから、普通の1日を好きになれる生き方をしたい。

 

そんな今日は、

明日が誕生日の私にとって、

54歳最後の1日です。

(日本時間では、もう2日になってるけど)

 

 

朝からジム来て、

サウナ入って、

運動して、

ロビーでラップトップ開いて仕事して。

 

まるでバケーションのような1日。

珍しく、ラップトップの前にがっつり座って

ブログ書いてるのも、この記事に出会ったから。

 

小さなことかもしれないけど、

小さな大事なことがたくさんあって、

そのひとつひとつを愛おしいなと思える日々。

 

私はそんな旅の途中です。

私たちは毎日、死ぬ。だからブログ書こう。

書きたいことは毎日ある@夏日の夜中

 

 自分の中に、「好奇心」という生き物がいる。

 そいつは、朝目覚めた時から、夜寝るまで、

 恐ろしく活発で、いつもキョロキョロしている。

 

 面白いことに飢えていて、

 まるで、腹ペコアオムシみたいに、

 セカイを歩きながら、

 片っ端から食べてしまうような勢いだ。

 

 こんな腹ペコ好奇心虫を宿していると、

 半端なく疲れることもある。

 

 このところ、その疲れ方が、5歳の男の子みたいだ。

 その辺の草っ原を思い切り駆け回ったあとのように

 パタッと倒れこむ。

 

 あぁ、そうか。

 

 こんな感じで、

 いつかパタッと死んじゃう可能性だってあるんだ。

 

 書きたいことはただひとつだけ。

 

 どれだけ、私がこのセカイのことが大好きかってこと。

 

 好奇心は、もっともっと、このセカイを好きになりたくて、

 いつもキョロキョロしてるんだよ。

 

 思い切り1日を生きて、

 夜になると、パタッと倒れる。

 

 毎日生まれて、毎日死ぬ。

 

 だから、いつ死んでもいいように、

 これからブログを書くことにする。